さちこのどんぐり
◆プロローグ
その年の夏、お盆の時期に5日間だけ
私は、約一年半ぶりに関西にある実家に帰っていた。
「明後日には東京に戻るから…」
日が沈んで数時間しか経ってない、
まだ蒸し暑い田舎道を、
白いワンピースに足元はローヒールのサンダルをはいて、
電話で話しながら歩いている私の耳に、
まだ元気に鳴く蝉の声が聞こえる。
たぶん、前方に見える林の辺りからだ。
いま私が歩いている道の両側は畑が広がっていて
それに面して建つ一軒の農家の軒先で
風鈴が「ちりん…」と鳴った。
「それとね…アタシ達が付き合ってること、お母さんには話しちゃったよ…
だって、あのとき『そうしょう!』って言ってくれたから」
電話の向こうの大森和也は
「そっか…うん!」
それを聞きながら私は和也の笑顔を思い出していた。
昨年4月、大学に進学し、実家を出て東京で一人暮らしを始めた私は、
それから8ヶ月くらい経った冬に彼と出会った。
付き合い始めてからは半年くらいになる。
かなり年上の彼氏だけど…
その分、いろんなこと知ってて、包容力のある彼が好きだ。
逆に彼から私がどう見えているのか…
それを時々、不安に思うことがある。
出会った頃の彼は
「本当に、いいのか?」って
私が本気で彼に好意を寄せていることを疑っていた。
いまでも完全に信じてくれているのか分からない。
でも、私は和也のことが
そして、彼の「笑顔」が大好きだ。
私は、約一年半ぶりに関西にある実家に帰っていた。
「明後日には東京に戻るから…」
日が沈んで数時間しか経ってない、
まだ蒸し暑い田舎道を、
白いワンピースに足元はローヒールのサンダルをはいて、
電話で話しながら歩いている私の耳に、
まだ元気に鳴く蝉の声が聞こえる。
たぶん、前方に見える林の辺りからだ。
いま私が歩いている道の両側は畑が広がっていて
それに面して建つ一軒の農家の軒先で
風鈴が「ちりん…」と鳴った。
「それとね…アタシ達が付き合ってること、お母さんには話しちゃったよ…
だって、あのとき『そうしょう!』って言ってくれたから」
電話の向こうの大森和也は
「そっか…うん!」
それを聞きながら私は和也の笑顔を思い出していた。
昨年4月、大学に進学し、実家を出て東京で一人暮らしを始めた私は、
それから8ヶ月くらい経った冬に彼と出会った。
付き合い始めてからは半年くらいになる。
かなり年上の彼氏だけど…
その分、いろんなこと知ってて、包容力のある彼が好きだ。
逆に彼から私がどう見えているのか…
それを時々、不安に思うことがある。
出会った頃の彼は
「本当に、いいのか?」って
私が本気で彼に好意を寄せていることを疑っていた。
いまでも完全に信じてくれているのか分からない。
でも、私は和也のことが
そして、彼の「笑顔」が大好きだ。
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