さちこのどんぐり

~そこ手摺気をつけて

手術後、病室のベッドの上で母から正樹の話を聞いたとき
香奈は驚くよりも、なんとなく以前から
そのことを知っていたような気がしていた。

彼女には、手術を受ける前から、そんな結末が予想されていた。

だから悲しいというより、
喪失感から茫然としてしまった。

術後の麻酔が切れてからも、数日間、薬で眠っていた香奈が目覚めたとき


正樹は、

もういなくなっていた。




それから1週間ほどして包帯が取れ
まだぼんやりとしているが、視界が戻ってきた。

しばらく見えない生活をしていた香奈は逆に変な違和感を感じてしまった。


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