さちこのどんぐり
~君の好きなところ
「はあ…」
東京に来て、そろそろ1週間。
その日も、相変わらず小野寺一樹はひとり落ち込んでいた。
手の中にある缶コーヒーの暖かさを感じながら、
「はあ…」
もう一度溜息をつく。
東京の郊外にある勤務先に近い薄暗い夜の公園で、
いまはもう水が止まっている噴水脇の冷たいベンチに座る小野寺は、
まだ別れた前カノのことを考えていた。
郊外にある会社の独身寮へは歩いて10分ほどで帰ることができる。
だから、仕事が終わって、時計は20時を少し回ったくらいだが、
家路にも向かわずに、会社の近くのこんなところにいる。
時折、近くの交差点から車のヘッドライトの灯りが差し込むが、
それ以外、わずかな灯りしかないこの公園には人気もなく、
そんなところを選んで佇んでいるのは彼ひとりだけだった。
社員寮がない首都圏以外の地域や、前の神戸では
普通の賃貸物件を社宅として社員を住まわせている。
だから小野寺も湊川のアパートで部屋を借り、彼女と住んでいた。
そんな、これまでの生活と比べると社員寮での生活は少し違っていた。
確かに通勤は楽なんだが、隣人が皆、同じ会社の人というのは
新人の小野寺にとって気を使ってしまう環境だ。
おまけに「寮長」なんて口やかましいOBのジジィまでいる。
そんなふうに現状に馴染めてないだけに
余計、前カノと暮らしていた神戸が懐かしいと感じていた。
東京に来て、そろそろ1週間。
その日も、相変わらず小野寺一樹はひとり落ち込んでいた。
手の中にある缶コーヒーの暖かさを感じながら、
「はあ…」
もう一度溜息をつく。
東京の郊外にある勤務先に近い薄暗い夜の公園で、
いまはもう水が止まっている噴水脇の冷たいベンチに座る小野寺は、
まだ別れた前カノのことを考えていた。
郊外にある会社の独身寮へは歩いて10分ほどで帰ることができる。
だから、仕事が終わって、時計は20時を少し回ったくらいだが、
家路にも向かわずに、会社の近くのこんなところにいる。
時折、近くの交差点から車のヘッドライトの灯りが差し込むが、
それ以外、わずかな灯りしかないこの公園には人気もなく、
そんなところを選んで佇んでいるのは彼ひとりだけだった。
社員寮がない首都圏以外の地域や、前の神戸では
普通の賃貸物件を社宅として社員を住まわせている。
だから小野寺も湊川のアパートで部屋を借り、彼女と住んでいた。
そんな、これまでの生活と比べると社員寮での生活は少し違っていた。
確かに通勤は楽なんだが、隣人が皆、同じ会社の人というのは
新人の小野寺にとって気を使ってしまう環境だ。
おまけに「寮長」なんて口やかましいOBのジジィまでいる。
そんなふうに現状に馴染めてないだけに
余計、前カノと暮らしていた神戸が懐かしいと感じていた。