さちこのどんぐり
10分ほどそこで待っていると
「よく来たなー吉田!」
黒い軽自動車に乗った木村が彼を迎えに来た。
妻を亡くした後、
その喪失感から外に出ることも減っていた吉田のもとに
「いまは社員寮の寮長を辞めてしまって、
実家のある栃木県の田舎に移り住んでいる」と木村から連絡があった。
そして「いいところだから一度遊びに来い」と。
このまま引きこもっているのも良くないと考えていた吉田は彼の誘いに乗ることにした。
のどかな田園風景のなか、
違和感を感じるくらい立派な自動車道路を
木村が運転する軽自動車で20分ほど走って、
今の彼の「住処」にたどり着いた。
木村の実家の敷地内に彼が退職金で建てた家で、
若い頃に離婚してしまって今は一人身である木村が住むにはちょうどいい「こじんまり」とした家だった。
彼は今、この家で暮らし、実家の畑を手伝いながら暮らしているようだった。
「親父が死んでしまって、お袋だけになってしまってな、そのお袋も最近あちこち調子悪くて…弟は大阪で家族もいるし、俺が戻ることにしたんだ。」
「東京では、お前がカラスに負けて栃木に帰ったなんて間違った噂が独り歩きしてるぞ」
そう言った吉田に木村は少し険しい表情で
「実はお前に協力してほしいことがあるんだ」
「よく来たなー吉田!」
黒い軽自動車に乗った木村が彼を迎えに来た。
妻を亡くした後、
その喪失感から外に出ることも減っていた吉田のもとに
「いまは社員寮の寮長を辞めてしまって、
実家のある栃木県の田舎に移り住んでいる」と木村から連絡があった。
そして「いいところだから一度遊びに来い」と。
このまま引きこもっているのも良くないと考えていた吉田は彼の誘いに乗ることにした。
のどかな田園風景のなか、
違和感を感じるくらい立派な自動車道路を
木村が運転する軽自動車で20分ほど走って、
今の彼の「住処」にたどり着いた。
木村の実家の敷地内に彼が退職金で建てた家で、
若い頃に離婚してしまって今は一人身である木村が住むにはちょうどいい「こじんまり」とした家だった。
彼は今、この家で暮らし、実家の畑を手伝いながら暮らしているようだった。
「親父が死んでしまって、お袋だけになってしまってな、そのお袋も最近あちこち調子悪くて…弟は大阪で家族もいるし、俺が戻ることにしたんだ。」
「東京では、お前がカラスに負けて栃木に帰ったなんて間違った噂が独り歩きしてるぞ」
そう言った吉田に木村は少し険しい表情で
「実はお前に協力してほしいことがあるんだ」