さちこのどんぐり
前の飼い主が、さちこを今の飼い主に譲ったときも
当時のご主人がそんなふうに悲しそうな顔をしていました。

不安を感じながら、さちこがそんなことを思い出していると


黒い服を着た人間がたくさんやってきて…

それを見たさちこは
「前にも同じことがあったにゃ」




人間が悲しい顔をしていると黒い服を着たひとがたくさん来て、
それから、自分は違う飼い主のところに行かなきゃいけなくなる。

さちこが好きな人間は悲しい顔をした後にいなくなっちゃう。

もう、大好きな人間がいなくなるのは嫌なのにゃ

人間の悲しい顔を見るのは嫌なのにゃ




さちこは人間には笑っていてほしいと思うようになりました。

ご主人がいなくなってからの奥さんの悲しい顔はもう見たくないし、
今の優しい飼い主から離れるのは嫌だと考えていました。

それに、もう黒い服の人間が見たくなくて、
家を飛び出したさちこは迷ってしまい




そのままノラネコになってしまいました。
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