さちこのどんぐり
秋から冬に変わる寒い11月のある日

さちこは
「お腹空いたにゃ」て、
食べるものを探して町中を歩いていました。

もう日が沈んで、辺りは暗くなり始めても、

なかなか食べ物は見つかりません。
さちこは、まだノラネコとしては「新人」だったため、
コツがわかっていなかったのです。



目の前に歩道橋が見えてきました。確かこれを渡った先に公園があって
「しばらくの間、そこを住処にしよう」
さちこは、そう考えました。

歩道橋の上には高校生くらいの男の子と女の子が、
何かを食べながら話しているのが見えます。

「あ、食べ物持ってる!少しもらえないかにゃー」
そう思って、さちこが二人に近づいたときです。

女の子が突然大きな声で

「なんで、そんな告白しかできないの!」

って叫んでいるのが聞こえました。



さちこは、その場を離れることにしました。

「なんだか…ご飯もらえる空気じやないみたいなのにゃ」

住処にする予定の公園を抜け、
いい匂いのするお店が並ぶ商店街を通り過ぎ、
さちこは住宅街のほうに来てしまっていました。

人通りは、さっきまでより少なくなっちゃって、



「この辺はだめだにゃー」
そう考えて、来た道を戻ろうとしたときです。


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