さちこのどんぐり
次の日の午後
なんとなくコウタくんのことが気になったさちこは
再びコウタくんを訪ねてみました。

その日も青いセーターのコウタくんは寒いベランダにいました。
銀色の箱に入った茶色い玉みたいのを手に持って、
それを眺めながら、ときどき微笑んでいました。

でも、さちこはコウタくんを見て
「昨日よりケガがひどいみたいだにゃ…」そう感じました。

さちこを見つけたコウタくんが

「あ!昨日のネコだ!おいで!おいで!」

さちこがコウタくんに近づくと

「ほら!今日は少しだけど、お菓子があるんだ」

ズボンのポケットから粉々になったビスケットを出して、その欠片をさちこにくれました。

「あのベランダの子供はコウタくんていう名前みたいだにゃ
やさしい人間だにゃ」

さちこはそう思い
お礼にコウタくんを喜ばせてあげたいと考えました。

「そうだ!コウタくんは茶色い『どんぐり』とかいうのが大好きなんだにゃ」

早速、さちこはどんぐりを探しました。
そうして見つけたどんぐりを持って、再びコウタくんのところへ行きました。



「わあ!どんぐりだあ!」

さちこは

「コウタくん笑ってたにゃ!良かったにゃ
大好きな人間にどんぐりを持っていくと笑ってくれるのにゃ」



それからさちこは悲しい顔をした人間に出会うたびに「どんぐり」を
その足元に置くようになりました。


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