さちこのどんぐり
「もう一度、コウタくんの分を見つけなきゃ」
そろそろ日が沈み、暗くなってからの「どんぐり」探しは大変なので、
さちこは急いで再び公園を探し回りました。
すると
さっきのより大きくて、色の濃い「どんぐり」が見つかりました。
「コウタくん、いっぱい笑ってくれるにゃ」
そう考えて、さちこがコウタくんを訪ねたときです。
その日は朝から雪がちらつく寒い日でした。
夕方になって外は、かなり寒いはず
なのにコウタくんは、やっぱりベランダに座ってました。
「コウタくん!おっきい『どんぐり』見つけたにゃ!」
さちこはコウタくんに駆け寄ります。
でも
コウタくんは俯いたまま…
「コウタくん!コウタくん!」
「なんだ!ベランダに野良猫が来てんのか!うるさいな!」
部屋のなかから怖そうな男の声が聞こえます
「コウタくん!ほら!また笑ってくれるかにゃ」
「…………」
さちこが
黙って俯いたままのコウタくんに近づいて、その体に触れたときでした。
「コウタくん…
体がとっても冷たいのにゃ…」
さちこは
すごく悲しくなりました。
その日から、さちこは
コウタくんには会っていません。