さちこのどんぐり
さちこにとって
「どんぐり」が何だったのか、
そして、
なぜ、そうまでして私に届けたかったのか
いまでも、私にはわからない。
でも、「さちこのどんぐり」は
「幸せのどんぐり」だった。
そこには、
心優しい小さなシロねこが
その短かった生涯で私達に願った「思い」が詰まっていた。
だから、私は
どうしても、さちこに伝えたいことがあって、ここに来た。
「わたしは今日も『笑顔』だよ。さちこ」
川に浮かべた「さちこ」の魂はゆっくりと
ゆらゆら輝きながら川下へ流れて行く。
途中に堰があるため
灯籠たちは一度中央に集まる。
川上から見たそれは
光の二等辺三角形で
あの日見た駅前のクリスマスツリーのようだった。
(終)