さちこのどんぐり
急に医師や看護師が慌ただしく動きだしたと思ったら
あっけなく、ばあちゃんは息を引きとった。
「かあさん!かあさん!」
泣き叫ぶ親父のそばで俺も泣いた。
「ばあちゃん…」
そのとき
これまでぼぉ~っと天井を見つめていたじいちゃんが
ばあちゃんのほうを見た。
じいちゃんは、ばあちゃんの枕元に顔を寄せ
そして
持っていた杖でベッドの枠を
カン・カン・カン・カン・カン…
カン・カン・カン・カン・カン…
気のせいか
俺には呆けちまってるはずのじいちゃんが
泣いてるように見えた。
カン・カン・カン・カン・カン…
ア・イ・シ・テ・ル…