さちこのどんぐり

「お客様、お話は責任者である私が承ります。」

奈津美の後ろから声がした。
振り返ると小野寺がいた。

「前嶋さんはレジのほう手伝ってきて」

奈津美にそう言うと、小野寺は強烈な中年女性二人と話を始めていた。

10分ほどして、どのように彼が説明したのか分からなかったが、
その中年女性の客は、普通に伝票のとおりの金額を払って帰っていった。



奈津美は小野寺に
「ご迷惑かけて、すいませんでした。でも、私…」

「いいよ。わかってる。
あの二人たぶん、いろんな店で、ああやってクレームつけてはサービス券とかを貰っているんだよ」

「小野寺さんが来てくれて本当に助かりました。」

「いいんだよ。客に謝るのも給料のうちだから」


奈津美は1か月ぶりに会う小野寺が急に大人に見えた。

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