さちこのどんぐり
やや客足が途絶えた時間帯に、いつもの黄色い制服の奈津美と
ダークのスーツ姿の小野寺は二人並んで、
レジから厨房へ繋がる、店内からは少し隠れた木目の壁の前で話をした。
「へえ…前嶋さんも犬を飼ってたんだ?」
「はい、私が中学のときに死んじゃったけど、実家でシーズーを。」
「そっか、俺も神戸にいた頃にミニチュアダックスフンドを飼ってたよ。」
「え?そのワンちゃん、今はどうしてるんですか?」
「うん?…それは、まあ…」
なんとなく言葉を濁した小野寺に
何か言えない事情があるんだなと感じながら奈津美は小野寺の横顔を見ていた。
「犬といえば、俺が中学生のとき近所で飼われてる犬の世話をするというバイトをしてたんだ。」
よほどミニチュアダックスフンドのことを話題にはしたくないのか、小野寺が違う話を始めた。
「毎日散歩してやって、餌やって、水を替えて…
それで月に三千円貰えるバイトを三軒掛け持ちだったから合わせて一万円近くでね、
当時中学生だった俺にとっては十分な稼ぎだったんだ。
でも、
そのうちの一匹が老衰で弱ってたころに
俺はインフルエンザで40度以上の熱を出してしまってね」
今日の小野寺はよく話してくれる。奈津美はそれが少し嬉しかった。
ダークのスーツ姿の小野寺は二人並んで、
レジから厨房へ繋がる、店内からは少し隠れた木目の壁の前で話をした。
「へえ…前嶋さんも犬を飼ってたんだ?」
「はい、私が中学のときに死んじゃったけど、実家でシーズーを。」
「そっか、俺も神戸にいた頃にミニチュアダックスフンドを飼ってたよ。」
「え?そのワンちゃん、今はどうしてるんですか?」
「うん?…それは、まあ…」
なんとなく言葉を濁した小野寺に
何か言えない事情があるんだなと感じながら奈津美は小野寺の横顔を見ていた。
「犬といえば、俺が中学生のとき近所で飼われてる犬の世話をするというバイトをしてたんだ。」
よほどミニチュアダックスフンドのことを話題にはしたくないのか、小野寺が違う話を始めた。
「毎日散歩してやって、餌やって、水を替えて…
それで月に三千円貰えるバイトを三軒掛け持ちだったから合わせて一万円近くでね、
当時中学生だった俺にとっては十分な稼ぎだったんだ。
でも、
そのうちの一匹が老衰で弱ってたころに
俺はインフルエンザで40度以上の熱を出してしまってね」
今日の小野寺はよく話してくれる。奈津美はそれが少し嬉しかった。