さちこのどんぐり


それから毎日、
その白ネコは奈津美の帰りを部屋の前で待っててくれるようになり、

翌朝には決まって「どんぐり」が落ちていた。

「ネコ缶の『お礼』なのかな?」


奈津美が、そんなことを考えながら、
相変わらずの大学とアルバイトの平凡な日々を送っているうちに、

暦は12月になっていた。




小野寺に対して寄せる好意は日に日に増していくものの、
なかなか彼との距離を縮められることはなかった。
アルバイト先では、あれからも何度か小野寺に会うことはできても、
あのときのように、ゆっくり話をすることはできず、
奈津美の気持ちを伝えるどころか、仕事以外の内容の話を小野寺とすることは全くなかった。

「どうしたらいいんだろう?」

奈津美は小野寺に対する気持ちを彼に伝えたいと考えるようになっていた。
そして、どうやって伝えたらいいのかを悩んでいた。


ところが、そんな奈津美はある日、少し早めの職場の忘年会が催されることになり、
小野寺もそれに参加することを同じアルバイト仲間から聞いた。


「やったぁ!」

奈津美はワクワクした。

小野寺に会える。
飲み会なら、プライベートな話もできる。
それは奈津美にとって小野寺に急接近できるかもしれないチャンスだった。




そういえば、
あの白いネコが「どんぐり」を運んでくれるようになってから
奈津美に運が向いてきた気がする。



あの白いネコは幸せを運ぶネコだ。

奈津美は勝手に白ネコの名前を「さちこ」と付けた。




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