さちこのどんぐり
それを聞いたとき。
小野寺の脳裏に神戸の前カノとケンカになったときのセリフが蘇った。
「最近『可愛い』とか『好き』とか言ってくれなくなった!」
「倦怠期なの!?」o(`△´)o
小野寺は持っていたグラスをテーブルに置くと
「前嶋さん、それって違うと思うよ。
何かをしてくれるから好きとか、何かをしてくれないから嫌いになるとか…」
意外だった小野寺の反応に気後れしながら奈津美は言った。
「何が違うんですか?」
小野寺が答える。
「その人から『与えられること』を望むんじゃなくて、
その人に『与えること』を望むのが恋愛じゃないかな。
心から何かをしてあげたいって思える人がいることが『恋愛』なんじゃないかな」
小野寺がそう思ったのは、東京に来たばかりの時に、
夜の居酒屋で悩みを聞いてくれた会社のOB吉田から聞いた話のせいだった。
彼の奥さんは今ホスピスにいるらしい。
あの夜、彼は奥さんのために何もしてあげられないと嘆いていた。
「小野寺さんは前の彼女に対して、そんなふうに考えられたんですか?」
「わからない…でも、彼女と付き合っていたときに、もっと彼女にしてあげられたことがあったんじゃないかって、最近よく考えるんだ」
「そのひとのことが、今でも本当に好きなんですね」
「………」
奈津美は小野寺に「そんなことはない」と言ってほしかったが、彼女が期待した返事はなく、小野寺は黙ってビールの入ったグラスを口に運んだ。それは奈津美の質問に対する小野寺の肯定だ。
「次の彼女を作ろうとかは考えないんですか?」
奈津美の問いに
「いまは、そんな気にはなれないなぁ…女性として好きだったけど、なんていうか気が合っていたというか…一緒に暮らしていても本当に毎日が楽しかった。俺の転勤がなかったら、いまでも付き合っていたと思うし、転勤が決まったときにも、俺が彼女の気持ちを十分理解してあげられていたなら、違った結果もあったんじゃないかって後悔することもあるよ」
小野寺の脳裏に神戸の前カノとケンカになったときのセリフが蘇った。
「最近『可愛い』とか『好き』とか言ってくれなくなった!」
「倦怠期なの!?」o(`△´)o
小野寺は持っていたグラスをテーブルに置くと
「前嶋さん、それって違うと思うよ。
何かをしてくれるから好きとか、何かをしてくれないから嫌いになるとか…」
意外だった小野寺の反応に気後れしながら奈津美は言った。
「何が違うんですか?」
小野寺が答える。
「その人から『与えられること』を望むんじゃなくて、
その人に『与えること』を望むのが恋愛じゃないかな。
心から何かをしてあげたいって思える人がいることが『恋愛』なんじゃないかな」
小野寺がそう思ったのは、東京に来たばかりの時に、
夜の居酒屋で悩みを聞いてくれた会社のOB吉田から聞いた話のせいだった。
彼の奥さんは今ホスピスにいるらしい。
あの夜、彼は奥さんのために何もしてあげられないと嘆いていた。
「小野寺さんは前の彼女に対して、そんなふうに考えられたんですか?」
「わからない…でも、彼女と付き合っていたときに、もっと彼女にしてあげられたことがあったんじゃないかって、最近よく考えるんだ」
「そのひとのことが、今でも本当に好きなんですね」
「………」
奈津美は小野寺に「そんなことはない」と言ってほしかったが、彼女が期待した返事はなく、小野寺は黙ってビールの入ったグラスを口に運んだ。それは奈津美の質問に対する小野寺の肯定だ。
「次の彼女を作ろうとかは考えないんですか?」
奈津美の問いに
「いまは、そんな気にはなれないなぁ…女性として好きだったけど、なんていうか気が合っていたというか…一緒に暮らしていても本当に毎日が楽しかった。俺の転勤がなかったら、いまでも付き合っていたと思うし、転勤が決まったときにも、俺が彼女の気持ちを十分理解してあげられていたなら、違った結果もあったんじゃないかって後悔することもあるよ」