さちこのどんぐり
翌朝になって、
奈津美は昨夜、さちこにご飯をあげるのを忘れていたことを思い出した。

玄関の外を見てみると今朝も「どんぐり」が落ちている。
それを見た奈津美は胸が痛んだ。


その夜、奈津美はいつもどおり
ネコ缶の中身を紙皿に入れてドアの外に置いておいた。

しかし
翌日になってドアの外を見てみると、紙皿の中身はそのまま残っていた。
「どんぐり」もない。

「どうしたんだろ?」


少し心配していた奈津美がその日、見つけたものは

路上に横たわる車に轢かれた「さちこ」だった。

そばには「どんぐり」がひとつ落ちていた。



奈津美はさちこのお墓を「どんぐり」がたくさん落ちてる近くの公園に作った。

毎晩「今日もいるかな?」って考えながら部屋に帰る奈津美にとって、
さちこは癒しだった。



だから

「お礼なんか…要らなかったのに…」

奈津美はまた泣いた。

路上で息絶えていた
さちこの白くて小さな体が頭に焼き付いてしまって、
涙が止まらなかった。

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