さちこのどんぐり
「でも…でも、なぜだろう?」
奈津美はあることに気付いた。
昨夜はご飯をあげてない。だからお礼は必要なかったはずだ。
そうか…違うんだ…
さちこは決してご飯のために
「どんぐり」を奈津美に届けてくれていたわけじゃなかったんだ。
さちこはきっと「私を喜ばせたかった」から
朝、見つける「どんぐり」に奈津美はいつしか笑顔になっていた。
奈津美が「幸運のどんぐり」だと思って、それを喜んでいることを
さちこは知っていたんだ。だから…
奈津美は昨夜、小野寺から聞いた言葉を思い出していた。
「何かをしてあげたいって思うことが大事なんだ」
「さちこ…」
奈津美は公園の片隅で、いつまでも泣いていた。