さちこのどんぐり

「ほら、食べるか?」

今日も一日の仕事が終わり、薄暗い蛍光灯が灯る、六畳ほどの広さの台所に置かれているテーブルで

日課としているビールの大瓶一本だけの晩酌をしていた金子雄二は
妻が作ってくれたおつまみを少し手のひらにのせると
ネコの前にさしだした。

「にゃあ」

ネコは金子の元に近寄り、それを食べた。

彼は、そんなネコを眺めながら、
目を細めつつ、冷たいビールを胃に流し込む。

「あら珍しい、あなたが家のなかで笑うなんて」
そういう芳江に

「何言ってんだ…笑ってないよ」

照れ臭そうに、またビールの入ったコップに口をつける。

テーブルの下では、そんな夫婦をネコが見上げていた。


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