さちこのどんぐり
紅葉の季節が過ぎ、そろそろ冬の候となり始めていた。
「そろそろ、仕舞い込んであったストーブやコタツを出さなきゃいけないわ」
芳江は夫が工場に行ってしまって、一人になった茶の間で、ぼんやりと、そんなことを考えていた。
その日も朝から快晴。
青い空が広がり、日差しもあったが、やはり寒い。
そんな日の昼前、
仕事中、急に雄二が倒れた。
従業員から、そのことを聞いた芳江は驚いて、
家の隣にある200㎡ほどの鉄骨造の自動車修理工場に駆けつけたが
そのときには、もう横たわる夫に意識はなかった。
間もなく到着した救急車で夫に付き添い、病院に行ったが、
そのまま雄二の意識が戻ることはなく
それから数日後にあっけなく亡くなってしまった。
芳江は悲しむ暇もなく、葬式の手続きや、
できなくなった自動車整備の仕事を調整しなくてはならず、
一人、忙しくしているうちに、
ふと、気が付くと
いつのまにか白ネコの姿も見えなくなっていた。
すっかりネコに情が移っていた芳江はあちこち探したが、
結局見つからず、
急にひとりぼっちになってしまった喪失感にすっかり気を落としていた。
そして、いよいよ明日の告別式を待ちながら
六畳ほどの客間用の和室で夫とふたりきり、
蛍光灯の灯りの下で、
真っ白に包まれて眠っている夫を、ただぼんやりと見つめていた。
「そろそろ、仕舞い込んであったストーブやコタツを出さなきゃいけないわ」
芳江は夫が工場に行ってしまって、一人になった茶の間で、ぼんやりと、そんなことを考えていた。
その日も朝から快晴。
青い空が広がり、日差しもあったが、やはり寒い。
そんな日の昼前、
仕事中、急に雄二が倒れた。
従業員から、そのことを聞いた芳江は驚いて、
家の隣にある200㎡ほどの鉄骨造の自動車修理工場に駆けつけたが
そのときには、もう横たわる夫に意識はなかった。
間もなく到着した救急車で夫に付き添い、病院に行ったが、
そのまま雄二の意識が戻ることはなく
それから数日後にあっけなく亡くなってしまった。
芳江は悲しむ暇もなく、葬式の手続きや、
できなくなった自動車整備の仕事を調整しなくてはならず、
一人、忙しくしているうちに、
ふと、気が付くと
いつのまにか白ネコの姿も見えなくなっていた。
すっかりネコに情が移っていた芳江はあちこち探したが、
結局見つからず、
急にひとりぼっちになってしまった喪失感にすっかり気を落としていた。
そして、いよいよ明日の告別式を待ちながら
六畳ほどの客間用の和室で夫とふたりきり、
蛍光灯の灯りの下で、
真っ白に包まれて眠っている夫を、ただぼんやりと見つめていた。