さちこのどんぐり
大森が式場のなかを祭壇に向かって進んでいくと、
最近の都市部での葬式では珍しく、大勢のひとがいた。
彼の前方の祭壇中央にある「親父さん」の遺影を大森は眺めた。
やがて、大森の焼香の順番がきて
ゆっくり、その遺影を見上げると
「大森さん…立派になったなぁ…」
大森には
「親父さん」がそう言ってくれた気がした。
焼香をして
目を閉じて
手を合わせ
大森は姿勢を正して、再び遺影を見上げた。
「親父さん…
お陰様です。ありがとうございました。」