さちこのどんぐり
「だから、結衣!俺と付き合ってくれ!」
浩二の告白は続いたが

もはや結衣には
その「だから」もわからなかった。

どういう流れで、「付き合ってくれ」となるのか。
こいつの頭のなかがどうなっているのか。

結衣は泣きたくなってきた。

でも

でも

結衣は、この「バカ」が好きだった。

浩二のことが好きだった。

ずっと前から…

少しずつ気持ちを落ち着かせると、やはり、そんな浩二から「好きだ」と言ってくれたことが、嬉しくなってきた。もっと素敵な言葉を期待していた結衣だったが、どうやら浩二は彼なりに真剣に告白してくれたようだ。

「いいよ」
結衣はそれだけ答えるのが精いっぱいだった。

「そうか!やったぁ!」
浩二はその場でガッツポーズをとって喜んだ。

こんな風に感情をストレートに表現してくれるところも結衣は好きだった。
告白は最悪だったが、浩二とこうなることを結衣も望んでいたし、
こうして浩二といる時間が幸せだったから…

「ま、いっか…」

結衣は笑顔に戻っていた。


時間も遅くなったので二人は家路に向かった。
その別れ道まで来たとき

浩二は笑いながら、
「じゃ!明日またな!」

そう言って歩道脇の欄干を空になったアイスクリームのカップで
カン・カン・カン…と何回か叩いて帰って行った。
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