さちこのどんぐり
男所帯の割によく片づけられた部屋のなかは、なんとなく昔と変わらないようで…
懐かしいように感じた結衣だったが、
ここで浩二が生活してるんだと思うと今の結衣には少し不思議な感じがした。
部屋の中央のソファに座った結衣がふと壁側を見ると
棚のうえに写真が飾ってある。
小学生の頃は背が小さくて棚の上にあった写真には気づかなかった。
見てみると、まだ小さいかった浩二と彼のお母さんの写真。
相変わらず器用な浩二の父親が紅茶を入れて、
隣のキッチンからリビングに移ってきた。そして結衣の向かいに座った。
「『結衣ちゃんが彼女になってくれた』って、あいつ喜んでたよ。でも『オムライスより好きだ』って言ったんだって」
「聞いたんですか?そうなんです!ひどい告白って思いました」
結衣がそう返すと
「あいつは母親が大好きだったんだ」
結衣の前に紅茶を差出しながら浩二の父親は口を開いた。
オムライスから急に母親の話に変わってる…と思いながら結衣は聞いていたが、
「あいつは母親が病気だと分かってから、いつも病院に付き添って行っていたんだよ。」
浩二が小学三年生のときに母親が病気で亡くなったことは知っていた。
だから浩二が関西から転校してきたときも結衣は気を遣って接していたが、
浩二は悲しんでるとか、全くそんな様子もなく、いつもバカやって笑ってた。
「俺の前でも強がっていたけど、一人で泣いていたのは知っていた。たぶん俺以上にあいつは悲しかったはずだから」
結衣にとって意外な浩二の一面であり、でも、「そうだろな」とも感じる話だ。
「死んだ妻が作る料理で、あいつが一番好きだったのがオムライスだった。妻が死ぬ少し前に3人で最期の食事をしたときも、あいつが食べたのはオムライス」
「……………」
「あいつにとって、『オムライス』は大好きだった母親との思い出なんだよ」
結衣の目に涙が浮かんできた。
「だから、そう言ったあいつの気持ちを考えたら、結衣ちゃんと浩二は仲良くしてほしいと俺は思っているんだ。」
懐かしいように感じた結衣だったが、
ここで浩二が生活してるんだと思うと今の結衣には少し不思議な感じがした。
部屋の中央のソファに座った結衣がふと壁側を見ると
棚のうえに写真が飾ってある。
小学生の頃は背が小さくて棚の上にあった写真には気づかなかった。
見てみると、まだ小さいかった浩二と彼のお母さんの写真。
相変わらず器用な浩二の父親が紅茶を入れて、
隣のキッチンからリビングに移ってきた。そして結衣の向かいに座った。
「『結衣ちゃんが彼女になってくれた』って、あいつ喜んでたよ。でも『オムライスより好きだ』って言ったんだって」
「聞いたんですか?そうなんです!ひどい告白って思いました」
結衣がそう返すと
「あいつは母親が大好きだったんだ」
結衣の前に紅茶を差出しながら浩二の父親は口を開いた。
オムライスから急に母親の話に変わってる…と思いながら結衣は聞いていたが、
「あいつは母親が病気だと分かってから、いつも病院に付き添って行っていたんだよ。」
浩二が小学三年生のときに母親が病気で亡くなったことは知っていた。
だから浩二が関西から転校してきたときも結衣は気を遣って接していたが、
浩二は悲しんでるとか、全くそんな様子もなく、いつもバカやって笑ってた。
「俺の前でも強がっていたけど、一人で泣いていたのは知っていた。たぶん俺以上にあいつは悲しかったはずだから」
結衣にとって意外な浩二の一面であり、でも、「そうだろな」とも感じる話だ。
「死んだ妻が作る料理で、あいつが一番好きだったのがオムライスだった。妻が死ぬ少し前に3人で最期の食事をしたときも、あいつが食べたのはオムライス」
「……………」
「あいつにとって、『オムライス』は大好きだった母親との思い出なんだよ」
結衣の目に涙が浮かんできた。
「だから、そう言ったあいつの気持ちを考えたら、結衣ちゃんと浩二は仲良くしてほしいと俺は思っているんだ。」