さちこのどんぐり
確か大森の記憶では電話の向こうの坂崎の実家は、たまたまその別れた彼女の実家と近所にあった。
やがて坂崎が静かに大森に告げた。
「今日、母親から聞いたんだけど、お前が昔バイト先で付き合ってた真美ちゃん…」
「ああ四年生のとき別れた子のことか?」
「亡くなったらしいんだ…」
「え……!」
大森より一歳下だったから去年なら三十八歳。
坂崎の母親の話によると癌で亡くなったらしい。
たぶんもう結婚もしていて、小学生くらいの子供もいたかもしれない。
それを聞いた大森は再び、彼女のことを思いながら、二人が付き合っていた、あの頃を思い出していた。
夜、シャッターが並ぶアーケード通りで、話しながら歩く二人の声がやたら響いていた。
耳につけたスマホからの「俺も聞いてショックだったよ…」と話す坂崎の声を聞きながら大森は思った。
彼女も自分も若かった。毎日がなんだか楽しくて…。あれから随分、時間が流れた。そして、いまの俺はといえば…寂しがり屋のくせに時々一人になりたくなって、相変わらずカッコつけで、ガンコで意地っぱりで、強がりばっか言って、結局、ひとりだ。
あいつ…、今頃、天国で…
「かっちゃんらしいね…」
やがて坂崎が静かに大森に告げた。
「今日、母親から聞いたんだけど、お前が昔バイト先で付き合ってた真美ちゃん…」
「ああ四年生のとき別れた子のことか?」
「亡くなったらしいんだ…」
「え……!」
大森より一歳下だったから去年なら三十八歳。
坂崎の母親の話によると癌で亡くなったらしい。
たぶんもう結婚もしていて、小学生くらいの子供もいたかもしれない。
それを聞いた大森は再び、彼女のことを思いながら、二人が付き合っていた、あの頃を思い出していた。
夜、シャッターが並ぶアーケード通りで、話しながら歩く二人の声がやたら響いていた。
耳につけたスマホからの「俺も聞いてショックだったよ…」と話す坂崎の声を聞きながら大森は思った。
彼女も自分も若かった。毎日がなんだか楽しくて…。あれから随分、時間が流れた。そして、いまの俺はといえば…寂しがり屋のくせに時々一人になりたくなって、相変わらずカッコつけで、ガンコで意地っぱりで、強がりばっか言って、結局、ひとりだ。
あいつ…、今頃、天国で…
「かっちゃんらしいね…」