生意気毒舌年下男子
「最後に切ったの、いつ…?」
「幸来に会う、1週間前」
なかなか包帯が頑固に巻かれていて、解くのに時間がかかってしまった。
けどようやく、ずっと隠されてきた傷が露わになった。
薄っすらと木目のように走る、細い傷跡。
切られた部分だけ皮膚の色が変わっていて、血がいまだ滲んでいて、見ていて痛々しかった。
でも、大丈夫。
あたしはそっと、
その部分にキスをした。
「…幸来?」
「………」
あたしは無言で抱きついた。
ふんわりする、本物の雲のような暖かさ。
「……」
早乙女くんも手を握りしめたまま、あたしを抱きしめた。
そして優しく、あたしの唇を塞いだ。
恥ずかしかったけど。
嬉しかった。
初めてのキスが、好きな人とで良かった。
「二瑚、あたし…二瑚が好き」
「俺も好きだよ……幸来」
それからチャイムが鳴るまで、あたしたちは抱きしめあい、何度もキスを交わした。
いつか二瑚が抱える傷が癒えたら。
本当に心からの笑顔を二瑚が見せることが出来るまで。
あたしはずっと、隣にいるから。