生意気毒舌年下男子
「やめろっ…」
ますますあたしから視線を外し、目を泳がせる早乙女くん。
その耳が、赤くなっていた。
「早乙女くん、熱でもあるの?」
あたしはフッと早乙女くんの額に手を当てた。
熱は…ないみたいだ。
「…馬鹿じゃねーの……ッ」
「ッ!?」
そう言われて初めて、自分の恥ずかしい行為に気が付いた。
そして慌てて、額から手を離した。
「ご、ごめんなさいっ……」
「い、良いんだ…別に」
何で先輩であるあたしが敬語で、後輩である早乙女くんがタメ口なの?
もし今自分が冷静だったら、そんなことを考えられたかもしれないけど。
…今のあたしは、恥ずかしさでいっぱいだった。
「幸来ちん?」
「幸来ちん先輩?ニコっぺ?」
2人の不思議すぎるあだ名のお蔭で、あたしたちは現実の世界に戻ってきた。
別にトリップしていたわけじゃない。
でも何故か。
この世界にあたしと早乙女くんしかいないんじゃないか、と思えるぐらい。
周りの音が、全て消えたんだ……。