生意気毒舌年下男子
「何でそんなに、久遠先輩が好きなんだ?」
「かっこいいじゃない?」
「それだけか?」
「最初はね。
でもずっと見ているうちに、中身も優しい人だってわかって。
ドンドン好きになって…夢中になっちゃった」
雫以外には言ったことがなかった、先輩への気持ち。
自分の体温が上がって行くのを感じた。
「そうか……」
早乙女くんが頷いたところで、電車の来るアナウンスが流れた。
「早乙女くんも、彼女さん大好きなんでしょ?」
早乙女くんがこっちを勢いよく向いた時、電車が入ってきた。
早乙女くんが何か言うけれど、電車の走る音で、何も聞こえない。
ただその顔は…怒ってる……?
目の前で扉が開き、早乙女くんはドンドン中へ入って行く。
あたしも乗り過ごさないよう、急いで追いかけた。
電車は空いていて、早乙女くんがロングシートの端に座り、あたしも隣に座った。
「早乙女くん……?」
あたしは何度も声をかけたけど。
早乙女くんが答えることは、最寄り駅に到着するまで、なかった。