生意気毒舌年下男子
再びあたしは、マンションの下で息切れしていた。
そんなあたしの姿を、早乙女くんは笑いながら見ていた。
先ほどの黙り加減が…嘘のように……。
「体力ねーなぁ」
「わ、悪かったわね……」
あたしは帰りも、早乙女くんを自転車の後ろに乗せ、マンションまでやってきたのだ。
早乙女くんは男子にしては多分細い方だから、重くはないんだけど。
あたしも高校2年生女子の平均体重より少し重いぐらいなんだけど。
駅からマンションまで、帰りは上り坂。
疲れるのも、無理はないと思う。
「ほら、行くぞ」
「ちょっ、待ってよ!
自転車置いてこないと!!」
「トロいな、さっさとしろよ」
ひねくれた口の利き方をしているけど、その口調は優しい。
“僕”の時も“俺”の時も変わらない笑顔で、早乙女くんは笑っていた。
オートロックのエントランスを通り、あたしたちはエレベーターに乗り込み、5階へ向かう。
停まったのでエレベーターを出ようとすると。
5階に、見知らぬ女性がエレベーター待ちをしていた。