生意気毒舌年下男子
昨日と同じように、後ろに早乙女くんを乗せ、あたしは息切れしたままホームへ向かう。
重い足取りのあたしとは違い、早乙女くんの足取りは軽やかだ。
羨ましいぞ…。
10分後に来た電車は、相変わらず混んでいて。
昨日みたいなことがないか、あたしは不安を覚えた。
電車に乗り込み、昨日のオジサンを急いで探す。
運良く、いないみたい。
ホッと胸を撫で下ろすと、早乙女くんにグイッと腕を引かれた。
「何!?」と聞く前に、後ろに壁が当たる。
ドア付近の、手摺の所。
その手摺に早乙女くんは掴み、あたしは壁と早乙女くんに挟まれる形に立っていた。
後ろが壁なので、昨日みたいなことがあることはないだろう。
「…早乙女くん……?」
小さな声で聞いてみると、早乙女くんは完全に無視。
口パクも何もしない。
そのため、あたしも黙り込んだ。
数分後、駅に到着した。
降りるときも、早乙女くんは手を引いてくれた。
あたしより背が低いくせに、力強くて。
不覚にも、ドキドキしてしまった。