生意気毒舌年下男子
ホームに降りても、駅を出ても、学校が見えてきても。
早乙女くんはあたしを放すことはない。
むしろ学校へ着くにつれて、引く力が強くなっている気がする。
「早乙女くん、離さないの…?」
離して、とは言わないあたしも可笑しい。
何故か疑問形だ。
言っているあたしが、自分の言っていることに疑問を持った。
「教室、確か4組ですよね?」
「そ、そうだけど…?」
学校内に入ったからか、敬語へとなる早乙女くん。
そのまま早乙女くんは、教室のある本館へ入って行く。
早乙女くんの教室も、あたしの教室も、本館にある。
「あれ?ニコっぺじゃーん」
「え?
何で上野先輩と一緒にいるの!?」
「上野先輩は久遠先輩じゃないの!?」
話しぶりから言って、早乙女くんのクラスメイトの女子が騒ぐ。
あたしが久遠先輩が好きって言うのは、有名なこと。
なのに今、あたしは早乙女くんと一緒にいる。
しかも手まで繋いでいる。
恥ずかしいけど…どこか嬉しくて。
振り払うことをしないあたしだった。