生意気毒舌年下男子
泣き始めたあたしに久遠先輩が近づき、頭をなでてくれた。
久遠先輩は身長があたしよりも高いのに、威圧感はない。
「久遠先輩……」
「ずっと俺のこと、思ってくれていたんだね」
「先輩……」
「俺、幸来ちゃんが俺のこと好きだってわかってた。
だけど俺から告白する勇気がなくて…。
でも今、1年の早乙女くんが機会を作ってくれて……。
ありがとう、早乙女くん」
お礼を言われた早乙女くんは、ニコッと笑った。
「おめでとうございます先輩方!
僕もお2人が結ばれて嬉しいです!!」
早乙女くんが笑うたび。
早乙女くんが祝福するたび。
…あたしの涙は、溢れてきた。
「そうだ上野先輩。
今まで学校までの道を案内してくれてありがとうございました。
ようやく僕、道覚えられたので、これからは一緒に行かなくて良いです」
「では!」と教室を出て行く早乙女くん。
あたしは「待って!」と言いそうになって、その言葉を飲み込んだ。
何で「待って!」なんて言いそうになったんだろう?
何で待ってほしいのだろう?
何で朝一緒に行かなくなることが、
こんなにも寂しく思えるんだろう……。