生意気毒舌年下男子
あたしが漕いで到着するよりも5分速く、駅に着いた。
さすが男の子、体力あるなぁ。
しかもあたしみたいに息切れはしていないし。
いつも通りホームに立ち、電車を待ち、乗り込んだ。
後ろに壁があり、目の前に早乙女くんが立つ、定位置。
目の前に早乙女くんの顔があって、ドキドキしてしまう。
顔が多分、いや絶対真っ赤なので、見せないよう俯いた。
「…熟したトマトみてーだな」
「へっ?」
「幸来、トマトみてーに真っ赤だよ」
「……何それ」
トマト…。
可愛らしい例えに、ふっと笑みがこぼれた。
ただし恥ずかしさは健在。
あたしはますます俯いた。
駅に着くと、今度はあたしから、早乙女くんの手を握った。
早乙女くんは一瞬だけ驚いて、握り返してくれた。
「やけに積極的だな」
「早乙女くんのこと、好きだもん」
「お前って本当に、ハッキリ言うよな」
「よく言われる。
でも、肝心な時にはハッキリ言えないの。
こう言う時だと言えるんだけどね」