彼岸の杜



うぅうぅ、と気まずさマックスではあるけどいつまでもこのままぐうたらしているわけにもいかない。あたしゃこの家じゃ居候だからね。プータローだからね。


もそもそと布団を抜け出してそれを畳んで片付ける。顔を洗いに行ったけど茜とはすれ違わなかった。


茜、どこ行ったのかな。まだ外、なわけないしごはんの用意はしてあるけどいない…今度こそトイレ?にもいなかった。


本当にどこ行っちゃったんだろ…というかなんであたしこんな不安になってるんだろ。昨日の夜の話聞いちゃったからかなぁ。まぁほとんど意味は分からなかったんだけども。


でも話の内容はわからなくてもあの話の中に出てきた言葉で不安にならない人間はいないと思う。それぐらい不穏なワード入ってたし。


それに何よりあんなに清二さんが狼狽えて茜も言葉を荒げて…不安になるなって方が難しいよ。


はぁ、と知れずにため息が出てしまう。あぁ、これで何個あたしの幸せどこか行ったんだろ。数えることすら億劫だわ。


うんうんと唸っていたら後ろから唐突に「朱里?」と声をかけられてあたしは乙女にはあるまじき「うぎゃああぁ!!」という野太い奇声をあげてしまった。


びっくー!!と傍目からもわかるぐらいにびっくりしてたと思う。自分でわかるわ。というか女子として今の声は終わってるわ…




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