彼岸の杜
ドキドキと心臓の辺りに手を置いて内心落ち着けーとなだめながら振り返るとそこには探していた茜がいて。
あたしの声に驚いたのかキョトンとした顔であたしを見つめていた。そうこれよ、あたしがしたかったのはこういう乙女な反応なのよ。なのにさっきの…しつこいようだけど女としてないわあれは。
遠い目をしてあははと乾いた笑いをこぼして改めて茜と向き合えば「驚かせたかしら?ごめんね」と言われてあたしも大袈裟だったからと謝った。
見た所茜は変わらないというか、いつも通りに見える。昨日の激しい姿なんて皆無のいつも通りの穏やかな雰囲気だ。
あたしが昨日の夜不可抗力とは言え2人のあんなところ見ちゃったから思うのかもだけど、普通はこんなに穏やかにはなれないんしゃないだろうか。よくわからないけどあの話は茜にいい話には思えなかったし。
じっと無意識のうちに見つめていれば茜と目が合ってしまい慌てて目をそらした。うぅ、やましいこと満載な反応しちゃったよ…!これじゃあたしの方が挙動不審じゃん!
ずーんと落ち込んでいればひんやりとした指があたしの目の下に触れる。
「目が腫れてるわ。どうしたの?」
そっと覗き込んでくる茜の宝石のような美しい瞳にあたしは思わず引き込まれた。こんなに近くで見るの初めてだ…