彼岸の杜
一瞬ぽーっとしたものの我に返ってなんでもないよと伝えれば心配そうな表情ではあったものの「そう?」と手を離してくれた。
「じゃあ理由は聞かないけれど、とりあえず冷やしましょうか」
水を持ってくるから居間にいてね、と言われて大人しくその言葉に従う。うん、自分でもひどい顔してるのは自覚してるしね。ここは大人しく従いますよ。
ぺたんと畳の上に正座をして待てば桶に水を汲んできた茜が布を浸してから渡してくれたのでお礼を言ってそれを目に当てる。
ひんやりして気持ちいぃ…井戸の水って不思議と冷たいんだよね。この季節だと少し冷たすぎるかもしれないけどこういうときは嬉しい。
ごはんの用意をする茜の傍ら布を目に当てて微動だにしないあたし。はたから見れば異様な光景である。
ごはんのときはさすがに外していたもののその後も冷やしていれば腫れも引いたので桶はそはのまま布だけ絞って台所のところに置いておいた。
「茜ー、あたし村に降りてもいい?」
このままここにいてもなんか変なこと考えそうでもやもやしそうだし、それなら運動したいなぁと思ったので一応確認。
ここにいること自体茜に質問攻めしそうだし少し自分で考えたい。そこまでの頭と集中力があたしにあるのかが問題だがそこはひとまず置いておく。