彼岸の杜



のんびりと周りを見ながら散歩していればどことなく前とは違う雰囲気を感じて思わず首を傾げた。


何が違うかと問われればざっくりとしか説明できないけど、なんか前よりも空気が生温かいというか。


茜や清二さんから聞いたように最近あまり作物の実りがよくなかったみたいでこの村にはあまり余裕がない。それを決定づけるように村の雰囲気も暗かった。


でも今はその暗さが少しだけ緩和しているような気がする。根本的なものが解決した安堵っていうよりは表面的な食い扶持が見つかったっていうとりあえずの安心っていうか。


いやまぁあたしが感じたってだけだしあたしは超能力者でもなんでもないのでただの思い違いだろう。


周りの景色を眺めていた目を前に戻せばちょっとお年を召したおじいちゃんたちがいたのでちょっとだけ頭巾を深く被る。


偏見って言われたらそうなんだろうけどこういう人たちって古い格式とか大切にしてそうなお堅い空気あるんだよね。(それ以外の優しい人だったら申し訳ない)


つまりは金茶色のあたしの髪なんて見せた時には神様の御許一直線コースである。そんな面倒は自分のためにも茜のためにも避けたい。ものぐさと言うなかれ、処世術である。


こそこそと体を小さくしながらおじいちゃんたちとすれ違う。なにも見咎められなかったことにホッとした。


ただそう思ったのも一瞬で、次に聞こえた言葉にあたしは固まった。



「赤い目の忌み子の生贄でも大丈夫でしょうか」


「生贄は生贄だ。問題ないだろう」



………は?






< 107 / 162 >

この作品をシェア

pagetop