彼岸の杜



じっと見つめていると茜もあたしの視線に気づいたようで「これ?」と困ったように笑みを浮かべる。



「気になるかしら」


「うん…初めて見るし。茜が着るの?」


「そうよ」



そっと広げて見せてくれたそれは真っ白でやっぱり白無垢みたいだ。この時代にも白無垢ってあるんだろうか。って普通に考えればありそうなものだよね。伝統的な日本の婚礼って感じだし。


茜が着るってことは結婚でもするのか?この時期に?いくらなんでもそんな空気読まないことはしないような気が……まさか。



「あ、かね…」


「なぁに?」



こてんと小首を傾げてあたしを見た茜は目を見張った。自分でもわかる。きっと今のあたしの顔は強張って真っ青だって。でも、仕方ないじゃん。こんな当たってほしくもない嫌な考えが思いついちゃったんだもん。


かすかに震える指先で茜の着物を掴む。縋るような目で当たらないでと内心叫びながら震える声で茜の名前を呼んだ。



「あかね…あ、たし、今日、村に行ったとき、茜が、生贄って…聞いて、」


「朱里…」


「うそ、だよね?茜、が、そんな、」



要領を得ないまま感情だけが先走ってただ嘘だと言ってほしくて茜を見つめる。じわりと滲む視界の中で茜はいつものように仕方ないわねって顔で、でもどこかどこか寂しげにほほ笑んだ。




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