彼岸の杜



この瞳のせいで村人はおろか、実の両親にまで疎まれて蔑まれて拒絶されて。いいことなんて何一つありません。


悲しくて辛くて苦しくて、女の子はぽろぽろと涙を流します。その涙は泉に落ちて、泉の一部となって消えました。


私もこの涙みたいに、消えてしまえばいいのに…



「どうしたの?」



突然の声に女の子はハッとして振り向くとそこには1人の男の子がいました。女の子と余り年の変わらない男の子です。真っ黒な髪と真っ黒な瞳をした男の子は女の子と目が合うと驚いたように目を見張りました。


女の子の脳内には今まで受けたすべてのことが浮かびます。自分を拒絶した手のひら、傷つけた言葉、浴びせられた視線。


またそんな苦痛を味あわなければならないのかと諦めと絶望と深い悲しみが女の子の心を壊そうとしました。思わずうつむくと男の子が近くにくる気配がします。そして、



「綺麗な瞳だね」



その心を包むような、癒すような、慰めるような、純粋な言葉が女の子の上に落ちました。





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