彼岸の杜



女の子はそんなことを言われるなんて思いもよらず驚きましたがすぐに笑顔を浮かべました。初めて自分を受け入れてくれてこの瞳を綺麗だと言ってくれた男の子が名前をくれる。


女の子は嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。男の子も安心したように笑みを浮かべて女の子に名前をあげました。



「きみの瞳は夕日を閉じ込めたみたいにきらきら光っていて、ここに咲く彼岸花みたいに鮮やかな色をしているから――なんてどうかな?」


「私は――?」


「うん、そう。きみは――。僕もね、漢字は違うけど色の名前だからおそろい。この名前はぼくときみの2人だけの内緒の名前だよ」



そうして女の子は男の子と2人だけが知る秘密の名前をもらいました。


女の子はこの日から自分の瞳がとても大切な宝物になりました。


男の子が綺麗とほめてくれた瞳はもう血の色なんてしていません。みんなが厭んだ瞳は忌み子の証ではありません。


それは彼岸花の赤と夕日の輝きを灯したとても綺麗な色になっていました。




< 119 / 162 >

この作品をシェア

pagetop