彼岸の杜
「っ、清二さん、茜はどこ?!」
思わず感情のままに目の前の清二さんに詰め寄る。いつもならそんな大胆なことイケメンの清二さんにするなんて恐れ多いとか何とか言ってご遠慮するところだけどそんなの今の状況に比べたらどうでもいい。
清二さんならこの村で一番権力のある人の血縁だもの。茜の居場所も知っているはず。
「お願いします!教えてください…!!」
「…行って、どうするの?彼女の意志は変わらないよ」
「そんなのっ、わからないじゃないですか!!」
「わかるんだよ!!!」
初めて聞く清二さんの大声にびくりと体が跳ねる。いつも穏やかな彼がこんな、怒鳴るような叫ぶような悲鳴をあげるなんて思ってもみなかった。
するりとあたしが勢いのままに掴んでいた手から力が抜けて清二さんの着物を放す。皺になった着物を気にもせずに項垂れる姿は今にも泣き出してしまいそうに小さく見えて。
「わかるよ……初めて会ったときからずっと同じ時間を過ごしたんだ…わからないわけがないっ!ずっと、一緒だったんだ……」