彼岸の杜



茜の意志は強くて変えられないだろうけど、それでも伝えたいって思うのはいけないこと?人の想いを、どれだけ想っているのか想われているのかを教えたいって思うのはいけないこと?


そんなの絶対にないよ!


泣きながら迫るなんてさぞホラー映画のように恐怖だったに違いない。それでも今のあたしにできるのは恥も外聞も投げ捨てて頼むことだけだから。



「…鎮守の杜」


「鎮守の、杜…?」



そこに茜がいるの?でも待って、そこどこ?



「神社の西側にしめ縄が張ってあるところがあるだろう?その小道が鎮守の杜に繋がってる」



言われて脳裏にある風景が浮かぶ。確かにあった…茜に聞いたらあそこは聖域だから入っちゃだめって言われた記憶がある。



「かなり進んだはずから、今行っても会えるかどうかは、」


「会えます!というか絶対会います!間に合わせます!!」



強く宣言して駆け出す。急がないと本当にもう茜に会えなくなる…!急げっあたし!!



「朱里さんっ、」


「っ、絶対!茜に会ってくるから!!」



それまで待っていてくださいと振り向きざまに叫ぶとあたしは全速力で走り出した。




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