彼岸の杜
苦しくて苦しくて一度休憩のために足を止める。き、木に手を置かないと立っていられないぐらいに足がプルプルだよ。あたしどれだけ走ったんだろ…それかもしかして年かな。それだったらかなりショックだ。まだまだぴちぴちの高校生なんだけど。
空を見上げればいつの間にか空は赤に染まっていて焦る。全然周りの様子とか代わり映えしないし鎮守の杜も茜も見つからないし…ほんとどこまであるんだっつうの。もしかして道間違えたとかべたなこと言わないよね。それだったら朱里ちゃん真面目に泣くんだけど。
はぁ、と大きなため息をこぼしてから改めて気合を入れる意味も込めてパッチンと頬を叩く。顔を上げると鬱蒼とした視界の中には似合わない白を見た気がしてあたしは走った。
小さくだけど人の影みたいなのが見えてあたしは叫ぶ。
「茜!!」
音が少ないからなのかあたしの声はよく響いてその集団がこちらを向いたのがわかった。その中で見えた緋色の瞳が驚いたように丸くなる。
会えたことに安心して知らず知らずのうちに涙がこぼれる。あれだけ清二さんには盛大に会うなんて言っておいてなんだけど走っても走っても見つからない姿にずっと不安だった。間に合わないんじゃないかって。もう遅いんじゃないかって。
でもよかった…間に合った。また会えた。