彼岸の杜
幸せそうに、本当に幸せそうに嬉しそうに優しく微笑む茜。あたしに会えてたまらなく嬉しいって表情。見ているこっちまで幸せになれるような、そんな笑顔。
くしゃりと自分の顔が情けなくも崩れることが分かった。
こんなに優しい人を、綺麗な笑顔を浮かべられる人を、自分よりも他の人の幸せを心から願える人を…
「茜…っ、あたしっ」
茜に行ってほしくないよ、あたしと一緒にいて、ずっとここで清二さんの隣にいてほしいよ。
涙をこらえた声をあげる前にあたしは柔らかな体温と優しい香りに包まれていた。言葉をたくさん重ねるよりも伝わってくる茜の思いと決意に耐え切れずにとうとう雫が落ちる。
あぁ、本当に茜のことは止められないんだ…清二さんの言ってた通り。あたしがここでどれだけぐずって駄々をこねて大騒ぎしたとしても困ったように微笑みながらも絶対に自分の意見を変えたりしないだろう。
行っちゃうんだ…もう茜には会えないんだ…ここでお別れなんだ……っ!
ボロボロと流れる涙を殺しきれない嗚咽を茜の肩に顔を埋めて隠すけど、着ている服を濡らしてしまったので結局は大泣きしていたことがわかってしまったと思う。それでも何も言わずに茜は抱きしめてくれていた。