彼岸の杜
「ねぇ、朱里。私の最後のお願い、聞いてくれる?」
穏やかに呟かれたその言葉にハッとして顔をあげると茜もこちらをまっすぐ見ていてあたしは何度も頷いた。
安心したように微笑みその胸元から小さな巾着袋を取り出す。茜の瞳よりも少し暗い色をしたような感じで、多分随分前から使っていたものなのだと思う。
「これを、清二に渡して」
手のひらをお椀のようにして受け取るとそんなに重いものでもなく小さな何かが入っていることだけはわかった。それを落とさないようにギュッと握りしめると「お願いね、」と名前を呼ばれて。
縋ってしまいそうになる自分を必死に抑え込んで茜を見つめる。周りの人に促されて立ち上がった茜はもう一度こちらを見て、少し照れたように、でも堂々とした表情でふわりと笑った。
「私と友達になってくれて、ありがとう」