彼岸の杜
◇10◇



ハッとして目を開くと見慣れた古い天井が目に入った。茜色の光が蔵の中に満ちてほこりがキラキラと輝いている。


何がなにやらわけが分からずしばらく呆然としていたけど慌てて体を起こした。目線を下げれば。



「着物じゃ、ない…」



これ、あたしが向こうに行ったときに着ていた服だ。向うで来ているには悪目立ちするに変だからって茜が片していたはずなんだけど。


じゃあなんでその服を今あたしが着ているの?というかあたしなんでここにいるの?いや当たり前にあたしここの時代の人間だしいるのは普通なんだけども。って今それは置いといて。


確か……茜がこのまま犠牲になるのが納得できなくて、最後に会いに行ったけど茜の意思を変えることはできなくて。それで本当に別れる前に茜から清二さんにこれを渡してほしいって巾着を渡されたんだった。


それでそれを渡しに清二さんを探して家まで行って、足を挟まれて悶絶しておばさんにぷっつんきて家出宣言聞いて、ってここもどうでもいいわ。ま、まぁなんやかんやで神社まで帰って清二さんが巾着の中身を取り出したら…



「そうだ!あの石が出てきたんだ!」



それでまた光に包まれたと思ったらここに戻ってきて、ってあの石は?!と慌てて周りを見渡せばすぐ隣に落ちていた。




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