彼岸の杜
ちょっと朝のテンションでおかしくなっていたのかノリノリで(自覚済み)茜を捜索する。と言ってもあたしがこの家で行ったことある範囲なんて狭いんだけど。
それでもとりあえずと粗方家の中を探してみる。こうして自分の家じゃない家をうろつくのはなんとも気まずいけれども1人はもっと気まずいんだもの。
ぴたり、うろうろして最後にあたしの視線が止まったのは玄関にあるあたしのくつ。あたしだけの、がある、玄関。……盲点だった。
茜の(だと思う)草履がないやないかーい、と自分で自分にツッコミながらあたしもくつに足を入れる。着物にくつのコンビがおかしいのはもう気にしないもんね!
少し肌寒い、でもどこか澄み切った空気を肺の中に吸い込めばなんだか体の中を洗われているような心地がして気持ちいい。寒いけど。
「茜はどこ行ったんだろ…」
キョロキョロと見える範囲に目を向けてみるけど茜の姿はない。うーん、あんまりあたしがあちこち動いて面倒ごとになるのもいやだしな。ただでさえ結構な不明人物なのにさ。