彼岸の杜
再び下に視線を向ける。彼岸花の咲く『お彼岸神社』、か。まんまだけどわかりやすくていいよね。
彼岸花はその形とかから家に持って帰ると家が燃えるとか名前も「彼岸」ってついてて不吉な花ってイメージが世間では強いけど、あたしの家はどちらかというと彼岸花に対していい印象がある。
そのことも昔じーさまから教えてもらったと思うんだけど、だいぶ昔のことだし覚えてないや。記憶の中の感情ではそんな感じってだけ。
彼岸花を見るともうそんな季節なんだな、素直に綺麗だなって思う。
「さぁ、朱里も起きたことだし朝餉でも食べましょう」
「はーい」
足下に置いてあった桶と柄杓を持って家に帰る茜の後ろをあたしも追いかけた。
(そういえば、)
ふと振り返って鮮やかに咲き誇る彼岸花を目に映す。
鮮やかなあか、燃えるようなあか、朝露に濡れた花弁が朝日を浴びて煌めいている。
(なんか、茜の目みたいだなぁ)
キラキラ光ってて、神秘的で触れちゃいけないような神聖さがあって。それでいて燃えるような強い光があって。
「朱里?」
「んー、今行く!」
とん、と足を踏み出した弾みにあたしの髪が朝日に反射して輝いた。