彼岸の杜
こてんと首を傾げた拍子に艶やかな茜の髪が肩から溢れ落ちた。なんて綺麗な黒髪なんだ…くそ、羨ましいぜ。
なんてあたしが見ていたうちに清二さんが話をしていてくれたらしく茜は「そう、行ってらっしゃい」と微笑んでくれた。
「ふふ、朱里、暇そうだったものね」
「うーん…えへ?」
まさかその通りなんて正直に言える人がいるだろうか…いや、そんなにいないはず!だってあたしNOと言えない日本人ですもの!!
(自分の中で)かわいらしい笑顔を浮かべて茜のように首を傾げてごまかしてみる。
「でも困ったわね」
「(あ、スルーされた)」
「朱里の髪、どうしましょう?」
「あ、」
忘れてた…そういえばあたしの髪の色ってこの時代にはかなり不自然なんだっけ。茜たちが普通にしてるから完璧に忘れてたよ。
んー、でもそうだよね。こんな目立つ髪してたらかなり不審がられるだろうし…ただでさえ小さい村で住民がみんな知り合い的なことを茜と清二さんから聞いてたし。
他の近くにある村ともたまに交流あるとかも話にあったけど、そのときは村の人間じゃないイコール他の村から来たやつだって認識してるみたい。侮るなかれ、村人情報共有能力。