彼岸の杜
確かに酷いって思ったのも本当だけど、あたしは清二さんや村の人が子どもたちにそういうことをしていることが酷いと思ったわけじゃない。
完全にそうってわけでもないけど。だってあたしのいた時代とは全く以って違ってるし、倫理観とか道徳観とか学校で習ったしね。
でもそれを否定することはこの村の中で精一杯に生きている人を否定することと同じだ。子どもたちはかわいそうだけど、それも苦しませないようにって親心にも取れる。
あたしが酷いって思ったのは……
「あ、あたしがいた時代でも、こことは違うけど、生活に困ってたりする子どもは多かったんです」
そういうと驚いたように清二さんは目を見張った。
あたしが話した未来の日本はたくさんのものにあふれていてそういう仄暗い話はしていなかったから驚いたんだと思う。
「確かにものは豊かになったけど、その分っていうのかな。格差とかできてて……」