彼岸の杜



自己嫌悪でうつむくあたしの頭の上にかすかな重みが乗った。ぽんぽん、と布越しでもわかるそれに顔を上げれば案の定清二さんがいて。


あたし、さっきめっちゃ自分が最低だとか最悪だとか酷いだとか暴露したのに清二さんの表情はどこか柔らかい。


なんとなく、茜に似たその表情と優しい瞳、自分の全部を受け入れて包み込んでくれるような雰囲気に少し心が軽くなる。



「最低でも、酷くもないよ。実際に自分が目の当たりにしないと人間なんてみんなそんなものだと思うし、それに朱里さんは気づけたでしょ?」



それに気づいたことに意味があるんだ、と清二さんは柔らかく笑う。


そうなのかな……今まで気づかない方がおかしいような気もするけど、気づけたあたしは何か変わるんだろうか。って、こんな風に他人事みたいに言ってる時点であたし何も変わってないよね。


がっくりと肩を落とす。でもこういう気づきが大事なのかも。今こう思ってるからこそ何かしたいって思うのかもしれないし。


気づかないままだったらこういうことも考えられない。反省だってしないし知ることだってしないしし学ぶことだってしない。


学校の勉強とかしたくないし実際あんましないけどもその中で気づくことって結構あって結構大事なのかも。と思いつつちゃんとそうやって行動できるかはわからないけど。





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