彼岸の杜
「ありがとうございます、清二さん」
慰めとか気休めで言ったのかもしれないけどそう言ってくれたことが嬉しかったからお礼を言えば、清二さんはイケメンスマイルを返してくれた。それだけでお米3杯はいけますぜ。
それからちょくちょくと他愛のない言葉をかわしながら村を回って行く。民家に畑に田んぼ。うーん、田舎を思い出すなぁ。
清二さんの家だと言うところも見せてもらった。普通の家よりも大きくてこの村の中では結構お偉い人みたい。
そういえば村の人にもたまに声かけられてたかも。あたしは存在感なくそうと頑張ってたからその会話の内容とかは全然わからなかったけどね。
じっと観察するように清二さんの家を見ていると中から人が出てきた。ん?中からってことは清二さんの家族の人かな?
「朱里さん、僕の後ろに」
「え?は、はい」
なんで?え、見つかっちゃいけない感じなの?あ、いやあたしの存在ばれたら言い訳立たないんだから当然か。
清二さんの後ろに言われるがままに隠れると「清二さん」と女の人の声が聞こえて。年齢から見るに清二さんのお母さんかな。
「清二さん、また性懲りもなくあんなところに行っていたの?」
「母さんには関係ありません」
あ、やっぱお母さんだったんだ、と思いながらあまり仲がいいとは言えない雰囲気と言葉に気まずさで肩をすくめる。