彼岸の杜
うーん、初見のあたしが言うのもなんだけどなんだかあんまり家族仲はよろしくない雰囲気……なんかこうギスギス?っていうかピリピリしてる。
こういうとこ他の人に見せたくないだろうしこっちもあんまり関わらない方がいいんだろうなぁとは思うけどあたし清二さんがいないと迷子100%だし。なんかジュースみたいな表現になったな。
気まずさと申し訳なさに体を小さくして存在感をなくそうと頑張るけど、それとは関係なしに清二さんと清二さんのお母さんの会話が耳に入ってくる。
「全く……一琶(ひわ)さんはすぐに妻を娶って自分の役目を果たしたというのに、あなたときたらいつまで経ってもあんな娘と交流を持って」
ピクリと清二さんの背中が小さく揺れる。心なしか纏う雰囲気もちょっとだけ不機嫌なものになったような。
はぁ、と大きなため息をついたお母さんはそんな清二さんには気づいていないのかずっと溜めていた不満をぶちまけるように口を開いた。
「あんな親にも捨てられたような不吉で気味の悪い娘、神主さまが言っていたから置いていたものを神主さまもいなくなった後じゃただの穀潰しじゃないの」
本当に汚らわしいというような口調にあたしのことが言われたわけでもないのに胸が苦しくて泣きそうになった。